格式・形状・様式などにこだわり、権勢的な書院造りに対し、自由奔走で自然主義で、素朴で質素な手法を取り入れたのが数奇屋造りといわれています。
遊び心に支えられた茶室の意匠は、軽妙にして洒脱、華麗にして繊細、素朴さと洗練さを併せもったものです。江戸初期につくられた桂離宮は、日本建築の代表格としてあまりにも有名です。もともとモデルになったものが、農家の納戸や掘っ建て小屋であり、そこから草庵風の建物(茶室)が生まれてきた訳です。
書院造りの豪壮華美に対し、数奇屋(茶室)では、精神を集中させるため狭小とし、4.5帖・3帖など、なるべく狭い空間としました。自然の素材感を生かし、屋根裏が直接見られる竹や丸太の垂木とか、竹・杉などの網代天井、農家の崩れかけた土壁を『美』に変えた下地窓など、自然の材料・技術・工法を洗練し、繊細に造りあげた閑静で素朴な造りなのです。
いかにも近くの林の中から切ってきた1本の曲がった雑木ながら、実は里山中を探してやっとこの茶室に合う柱を見つけてきた曲がった床柱であったり、決まりごとにとらわれない『あっと驚く』デザイン、造りが部屋のどこかにあるのです。
これは『見立て』の精神につながるもので、あり合わせのように見せているだけで、実際には最高のものを選りすぐっている訳です。成金趣味ではなく、人の気づかぬところ、目立たぬところに金を使う・・・洗練された最高の美と贅沢に見えない最高に贅沢な空間を、その狭い茶室の中に造り出そうとしている訳です。
こんな数奇屋建築が近年、銘土・銘石・銘木という高価な材料を使った建築となり、庶民性を失いつつある様に感じられるのは、残念なことです。
そんな中、あまりにも特殊で、ごく一部の嗜好性の強い建主だけのものでない、本来の『身近な存在としての数奇屋建築』を伊那谷風土の中で探求しています。
木造による『木の文化』を伝承してきた日本伝統建築・・・・・新しい物に生命が宿ると考え焼失されるごとに新しく洗練されてきた日本建築・・・・・物の人の本質を知り、自由な発想をするという数奇屋マインドの原点に戻りながら地域の杉・桧材等による『伊那谷数奇屋』を提案しています。
現時代性を加味した素材感、民家造りに数奇屋の精神を組み入れたデザイン等、興味のますます湧く所です。